映画評 バイス ディック=チェイニー副大統領物語

映画評でも「後味悪し!」と書かれていたこの映画、まさしくそのとおりであった。


            


私自身、胸に刺さるような映画を見ることが多い。
考えさせられ、後を引く映画こそが、自分の血肉となっているとの実感がある。


そんな意味では、この映画も反面教師としては、同類とも言える。
それにしても、ひどい!


コメディとして、笑える場面は随所にあるとしても、
まるで、テキーラをあおり、安紙幣を丸めて、コークを吸い込んだ粗暴な大男が、階下の中庭にいる人たちに向かって、つばを吐きかけて笑っているのをそばで見ているような感覚を覚えた。
動画で見ているのではない。
そばにいる粗暴な大男は、その光景を見ているあなたや私に、今にも襲いかかるかもしれない恐怖感と、ろくでもない行いを見せつけられるようにされた苦い思いの入り混じった感覚だ。


イラク戦争については、
大量破壊兵器あるあるデマをニューヨーク=タイムズ紙の安全保障問題担当の記者ジュディス=ミラーが流しまくったことや、それに関連するプレイム事件について、
華氏911
グリーン・ゾーン
フェア・ゲーム
記者たち 衝撃と畏怖の真実
などが公開されてきた。


これらはいずれもその悪について検証し、糾弾する姿勢の側からの映画だが、
本作は「捏造デマで戦争仕掛けて何が悪い! 
自身がCEOだったハリバートンに闇発注しまくって、株価も500%アップさせて大儲けさせて何が悪い!
底なしなアホの大統領であったジョージ息子ブッシュの情報を先取りし、操って何が悪い!
妻も公的機関やシンクタンクの代表として儲けさせて、何が悪い!
娘もオレと同じ、ワイオミング州下院議員として世襲して何が悪い!


米軍やテロ犠牲者など多数の死傷者を出し、米軍の自死者も増やして何が悪い!
全ては、『国民を守るため』だ!


実は、その美名のもと、ネトウヨ妻の金欲と権威欲を満たすためだけど・・・」
とのチェイニー夫婦の野心をむき出しにこれでもかと、2時間強の間、突きつけ続ける映画である。


これで胸クソ悪くならない観客がいれば、お目にかかりたいほどだ。


チェイニーは、太り過ぎの慢性疾患として1978年に心臓発作を起こして以後、心臓病と縁が切れない生活を送っており、途中で死に直面する場面もある。
だが、78歳になった今も健在である。


更には、

心臓――患者と医師、そして医療の進歩の35年にわたる物語
心臓――患者と医師、そして医療の進歩の35年にわたる物語
国書刊行会

などといった本まで出版しており、それもまた怒りに油を注ぐ。


アダム=マッケイ監督は、当然チェイニー本人の許可などを取らずに映画化しており、
「彼の了承を得たら、彼が内容に口を挟む権利を得てしまう。それではただの伝記映画だ。
我々は膨大なリサーチを行い、事実を入念にチェックして映画化したんだ」
と話している。


この映画の主題は、
「ダメ!絶対!共和党」


前述したイラク戦争を検証する映画も含め、権力を批判するショービジネスが作品としてではなくとも、アカデミー(メイクアップ&ヘアスタイリング賞)、ゴールデングローブ(映画部門 主演男優賞)などを受賞する部分においては、一定表現が健全だと言えよう(黒人差別など、タブーはあるにせよ)。


これだけこき下ろしておいてなんだが、イラク戦争に自ら尻尾を振って付き合どころか、米英にはしごを外されても反省も検証もない小泉ポチ政権をフィーバーして支えた日本国民としては、見るべき映画であることは間違いない。


無論、自身が有権者として反省するためにだ。



ちなみに安倍政権は、こんなろくでもない悪党に、2018年、秋の叙勲で旭日大綬章を贈っており、“保護領魂ここに極まれり!”と言わんばかりの平身低頭ぶりであるとも添えておく。



ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

この記事へのコメント